科学マジック!新聞紙1枚で割り箸をへし折る「大気圧パワー」の秘密
サイエンストレーナーの桑子研です。毎日が実験。
まるで魔法!たった1枚の新聞紙で、硬い割り箸(アイスなどの木の棒でも可!)をバキッと真っ二つにへし折ることができる——。そう聞いたら、あなたはどう思いますか?「そんなのできるわけないでしょう!」と思うかもしれません。いいえ、実はこの現象、怪力ではなく「空気の力」を借りる、れっきとした科学マジックなんです。今回は、誰もがアッと驚くこの実験の秘密を、科学の視点から解き明かしていきましょう!
百聞は一見にしかず!まずは不思議な現象をどうぞ
言葉で説明するより、まずは実際に見ていただくのが一番です。こちらの動画をご覧ください。
いかがでしたか? やり方はとてもシンプルです。まず、机の端から少しだけはみ出すように割り箸を置きます。そして、その上に新聞紙1枚を置きます。ここで間に空気が入らないように、綺麗に広げて、空気を抜くようにして整えると成功率が上がります。
準備はこれだけ。あとは、机からはみ出した割り箸の先端を、空手チョップのように素早く「エイッ!」と叩きつけます。
すると次の瞬間…!新聞紙はほとんど動いていないのに、なんと割り箸だけがポッキリと折れてしまうのです。
科学のタネ明かし!主役は「大気圧」という見えない力
このマジックの主役は、「大気圧(たいきあつ)」です。私たちはふだん意識していませんが、地球をとりまく空気には重さがあります。その空気の重さによって、私たちは常に四方八方から押されています。これが大気圧の正体です。その力は、なんと1平方メートルあたり約10トン! これは、例えるならゾウ2頭分の重さが、あなたの背中にのしかかっているようなものなのです。
「そんなに押されたら、ぺちゃんこになっちゃう!」と思いますよね。でも大丈夫。私たちの体の中からも同じ力で押し返しているので、私たちはその力に気づかずに生活できています。
では、なぜ新聞紙をかぶせると割り箸が折れるのでしょうか?割り箸を叩いた瞬間、割り箸は新聞紙を押し上げようとします。しかし、広げられた新聞紙の上には、膨大な量の空気が乗っかっています。素早く叩くと、新聞紙の上にある空気がよけるヒマがありません。
その結果、新聞紙の上の広大な面積にかかる「大気圧」という見えない巨大な手が、新聞紙が持ち上がるのを一瞬だけ強力に押さえつけます。この「押さえつける力」が、割り箸が折れる力よりもはるかに大きいため、割り箸は逃げ場を失い、机の角を支点にしてポキッと折れてしまうのです。
つまり、薄っぺらい新聞紙が、一瞬だけ「ゾウが乗った鉄板」のようにおもりになった、と考えると分かりやすいかもしれません。
実は身の回りにも!大気圧を感じる瞬間
この不思議な大気圧の力は、私たちの生活のいたるところで活躍しています。
吸盤が壁にくっつく:吸盤を押し付けると中の空気が抜け、外の大気圧が吸盤を壁に押し付けています。
ストローでジュースが飲める:ストローを吸うと中の気圧が下がり、大気圧がジュースの液面を押して、口の中まで押し上げてくれます。
山の上のポテトチップスの袋:標高が高い場所は空気が薄く、大気圧が小さくなります。そのため、袋の中の空気が外に膨らもうとして、袋がパンパンになるのです。
普段は意識しない空気の力が、実はこんなにもパワフルで、私たちの世界を支えているのですね。この実験は、準備も簡単で安全なので、ぜひご家庭でも試してみてください。「見えない力」を実感できたとき、科学の面白さにきっと心を掴まれるはずです!
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